2015年2月22日日曜日

ウィーンのホイリゲ街で考える観光とのバランス

「あの地域は観光客向け」

「あそこは観光客が多いから」

そんな言葉を発したり、聞いたりした事はありませんか?

日本でも海外からの観光客の誘致が取りざたされていますね。

世界でも有数の観光地京都の住むKino_San、我町にもいろいろ思う事はありますが、今回は観光客として見ている世界有数の観光地ウィーンの事について書いてみたいと思います。

ホイリゲはウィーン観光の重要な部分を占めています。
他の国にはなかなか見られない文化で、地元の人達も実際に楽しんでおり、音楽の都としてレベルの高い音楽も楽しめます。地元らしい雰囲気とウィーンの食(ワインと料理)と音楽が楽しめる、観光客には一石二鳥以上の物を得られる場所です。

でも、ウィーンのホイリゲ街は観光客が原因で大きくその姿を変えつつあります。

「あの地域は観光客向け」
旅行ガイドには必ず記載されているウィーンで最も有名なホイリゲ街グリンツィング(Grinzing)は地元ではこう言われています。(観光客の間でも言われているようですね)
グリンツィングは路面電車のグリンツィング駅を中心に狭い地域にホイリゲが軒を連ねていました。
夕食時ともなると狭い道に大型バスが連なり、観光客を其々のホイリゲに送り届けていました。
その当時のグリンツィングには団体客が入ることの出来る大きなホイリゲだけでなく、地元の方で賑わう小規模なホイリゲも多く、個人旅行の観光客の人気も集めていました。
ウィーン市にとってドル箱的な観光地だったのです。

で、当局は考えました。「もっと、もっと、観光客に来てもらおう。」
交通渋滞を解消し大型バスを多く駐車出来るようにすれば、今以上の観光客が来てくれるはず。
だから、大型バスが何台も駐車出来る地下駐車場を作りました。

大型バスで訪れる団体客は増えました。
でも、あまりの団体客の多さに地元の方の足が遠退き初めました。
地元の方で賑わっていた小さなホイリゲが次々店を閉じていきました。
そしてグリンツィングはホイリゲの廃墟だらけの地域になっていきました。

ウィーン市は景観条例を作りグリンツィングの景観を保とうとしていますが、現在のグリンツィングは団体観光客向けの大型ホイリゲと外観はホイリゲ中は。。。的な店が占めるまさに観光客向け地域と化してします。
(裏通りには昔ながらのホイリゲもなくはない)
グリンツィング

こうなると団体客も個人も観光客は「らしい」地域を探します。
そしてその「らしい」地域に押しかけます。
今、古いホイリゲ街が崩壊しつつあるのはグリンツィングと同じ区内のノイシュティフト・アム・ウァルデ(Neustift am Walde)です。
大型ホイリゲを中心に団体客の誘致が進んでいます。
小さなホイリゲでは後継者不足も相まって、店を閉じる処が多くあります。
年々廃墟ホイリゲがふえつつある地域です。
今後のウィーン市の対応が気になる地域です。
ノイシュティフト・アム・ウァルデ
観光客は殆ど見かけなかったウィーン最北のホイリゲ街シュタマースドルフ(Stammersdorf)も例外ではありません。
家族経営の小さなホイリゲが多く、団体客を受け入れる器の少ないシュタマースドルフですが、一部のホイリゲは団体客を受け入れているようです。
後継者問題でしょうか?廃業するホイリゲも出てきました。
昔ながらのホイリゲ文化が現役で息づいていたシュタマースドルフですから、こちらも今後が気になります。
シュタマースドルフ
観光客が増えればいいことだけでない。
でも、地元の方だけでは商売が成り立たない。
どんな地域にしていくのか。
ウィーンのグリンツィングの例は検証の価値ありだと思います。




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